の静かな寝息が腕の中から聞える。

(やっと眠ったか)

そっと顔を覗きこめば、目が今まで泣いていた事を主張するように痛々しく腫れていた。

未来からやってきたと言うこの少女は慣れない生活の中であるのにも関らず
気丈で弱みの一つも見せることがない。
あったかも知れないが俺には少なくとも見せなかった。
だからこそ、こうして涙を見せられると不安になる。
儚い姿を見せ付けられると、消えてしまいそうな錯覚にとらわれるのだ。

「・・・・・いつか、お前は帰るのか?お前がいるべき世界に」

囁くような声。その言葉にが返事をよこすわけでもなく、規則正しい寝息が聞えるだけだった。

を見ていると感じる焦燥感。なぜだろう、こんな少女1人に心を奪われつつある自分がいる。
昔の自分からは考えられないことだ。


「・・・・・・・・・・らしくない」

腕の中のの頬をそっと撫でる。が少し身動ぎをしたので、起きてしまったのかと思ったが呑気な寝顔が見えた。

「みつな、り」


名前を呼ばれたが、その後に寝言が聞えたかと思うと、腰の辺りにの腕が回った。
抱きしめ返してやろうかと思ったが一瞬とまどう。
まあ、相手は寝ているのだから構わないだろう。そっと抱きしめた。





「・・・・大好き」











顔が火照るのを感じた。

らしくない、本当にらしくないが。


でもたまには、こんなのもいいかもしれない。



そう思った雨の日。