ただいまといえる場所
第一話 無双の世界へこんにちは
「あ、先輩お疲れ様でーす」
「お疲れ様」
自分で言うのもなんだけど、うちの学校の剣道部は全国大会8連覇してるって言うことでそこそこ有名だし
部長であるあたしもおまけでそこそこ有名だ、と思う。
ついでに後輩からの人望だってそれなりにある。・・・多分
明後日にある、今年の全国大会9連覇はあたしにかかってる様なもんだから
やっぱり学校の名誉のためにもきちんと練習に出なきゃいけないと思う。
でもね、でもさ。
そんな肝心な時期に戦国無双2をだすコー○ーが悪いと思ってるのはあたしだけじゃないはず!!
「あれー?帰っちゃうの??」
親友のが防具を身に着けながらあたしに笑いかけてきた。
半分あきれも入ってるあたりたぶん理由はわかってるとおもう。
「だってー、戦国2発売だよ!!!ねえ!!今日兄ちゃんが買ってきてくれるんだもん。我慢しろってのが難しいよ」
「・・・なんかごめんね、戦国はめて剣道一筋のあんたをこっちの世界に引きずり込んで。親御さんになんと申し上げたらっっ!」
「いや、むしろ感謝してる」
親指を立てながらの肩をぽんぽんと叩いた。は一度あたしをちらりとみて
「ちなみに気になるキャラは?」
「小太郎と直江と浅井、かな。政宗とかもいいかな!は?」
「へー。あたしお世話し隊長の慶次がいいかも。あ!面白かったらかしてね〜」
「りょーかい!!てか、お世話し隊長って笑えるー。んじゃ、また明日!!」
「あいあいー」
と別れあたしは長い廊下を駆け抜け無双に向かって走りはじめた(ちょっと違うだろ
Myチャリをかっ飛ばし、髪型を気にするのもやめて、
あたしはもはや人間じゃない姿で一気に道路を駆け抜ける。
さっきすれ違った小学生に白い目で見られたのも最早気にならない。
家の前の曲がり角を曲がると、そこにはちょうど帰ってきた兄、の姿があった。
「おー、おかえり。ほら、戦国無双2」
ちらりと近所では見ないゲーム店の袋から戦国無双2を出した。
あたしはそのまま自転車で兄に突っ込むようにして近づいく。
「おにーたまー!!!!!!」
「危なっっ!!てかおにいたまはやめろ、おにいたまは」
「はーい」
あたしは兄に手を差し出した。
そして頭の中の未来設計では、兄からゲームを受け取り部屋に入って着替えもせずにゲームを始め小太郎やら幸村やら初期キャラを
がんばってやって、今日は徹夜も覚悟の 腐りきった一日を送る予定だった。
「・・・ー。兄様は喉が渇いたし、小腹が減ったな」
「・・・・・・・・・わ、わんもあ」
「お前のチャリでコンビニ行ってきてくれたら嬉しいなあ・・・」
「・・・・・・・・・どうぞ、自転車お貸ししますので」
兄は眉毛を不機嫌そうに寄せると戦国無双2を袋から完全に取り出し
「だから、コンビニ行って食いもん買ってこいって事だよ。あ、ちなみに逆らったらゲームたたき割んから」
わぉ、ダイレクト!!
「・・・・行きます。いや、行かせてください」
なんだか使われてる気もするが今日ばかりはしかたが無い、戦国2がかかってるし。
あたしは防具袋と通学鞄を持ったままチャリを飛ばした。
田舎特有の田んぼみちをチャリで駆け抜けた。
少しでも早く帰れるようにいつもより気合を入れてこぐ。
・・・多分明日は筋肉痛だな。
長い田んぼ道を抜ければ商店街がある。田舎であるここで唯一まともな買い物のできる場所だ。
コンビニもスーパーも洋服やとかも全部集まっているのだが、自宅から少し遠いのがいただけない。
一番近いコンビニにチャリを停めて適当におにぎりとジュースを引っつかんでレジに置いて1000円を財布から出した。
お釣りをもらってる時間がもったいない気もして「釣りはいらねぇぜ」とか金持ちっぽいことを
やろうかと思ったけど恥ずかしさと貧乏人の性がそれを許さなかった。
店から出てもう一度田んぼ道を戻っていると、頬に大粒の水が当たった。
「うげー、雨かよ!!」
制服の下に着ていたパーカーのフードを目深にかぶる。
試合前に風邪をひいたら笑えない。というかにどやされる、あと顧問の佐々木先生。
あたしは往きよりも速いスピードでこいだ。
自分の足がこんなに若かったなんて初めて知ったかも・・・
「あ!やば!!」
雨にぬれたアスファルトにハンドルを取られ、田んぼに突っ込みそうになる。ちょっとおつむが足りないよ自分!!!
もうだめかも!!
泥だらけになることを覚悟して目をぎゅっと瞑った瞬間、来ると思っていた泥の気持ち悪さはなく、なぜか頭が真っ白になって苦しくなった。
言い訳
やっちゃたよー。無双ドリーム開始!!
間違っても慶次夢じゃありませんよw
BACK・NEXT