残されたモノに託される多くの希望。
きっと、凄く重いよね。

信じていたものが消えた瞬間、目の前に広がる暗闇。
その暗闇の大きさに自分を見失ってしまう事があるかも知れない

でも、きっとアナタは大丈夫だよ・・・


第5話 最後の武士(後半)

「何もかも失った・・・。もう・・・終わりだ」

幸村さん・・・

あたしの決意を打ち砕くような根暗な台詞を吐くんじゃねぇ!!!

とテンション急降下中の幸村に心の中で毒づく。
この鬱村め(ひどい
でも、あたしを庇う様に隣にいた慶次は諭すように幸村に声をかけた。

「何も終わっちゃいないさ」
そして松風に走り出すように合図を送る。
「さあ、こっからだぜ!一緒に生き残ろうや、幸村」

あたしは進軍を始めた慶次の後を追うように走り出す。

「ねえ、慶次。・・・大丈夫かな」
「・・・やれるだけの事をやればそれで良い。無理はするんじゃねぇぞ」
優しい慶次の言葉にすこし勇気が沸いた。人を倒す勇気なんて本当はいらない。
でも、大切な人を守るためにだったら必要な勇気だ。
大丈夫・・・大丈夫。
やっぱり血とか怖いけど、なぜだか負ける気はしなかった。
大きく深呼吸をした。大丈夫


「今日、信長が時代を変えた」
武田信玄の息子であり幸村の主である勝頼様を長篠城に撤退させるため、あたし達は勝頼様を守りながら戦っている。
幸村は慶次に言われたその言葉に、苦しそうに眉を寄せ
「だが、私は変われなかった」
そう呟くように言葉をはきだした。
「ああ、あんたは変わらなかった。気づいているかい?」
慶次は全てを悟ったような顔だった。


鳶ヶ巣砦に指しかかると、徳川軍が設楽原へ、本多忠勝が勝頼様のいるこの砦に進軍を開始したという情報が飛びこんだ。さすがの慶次もこの情報には眉をひそめた。

「徳川の守護神、本多忠勝!奴はただ者じゃない!」
慶次は軽やかに松風を方向転換させ、あたしをちらりと見てから幸村に言った。
「俺は奴を押さえる。幸村と、おまえ達は織田勢を頼む」
「かたじけない、慶次殿!」
幸村は感激の声をあげた。
「まあ、そのかわりと言っちゃぁなんだが・・・。のこと、頼んだぜ。もいいな?」
「うん。気をつけて。・・・幸村さん、よろしく」
「はい」
慶次は本多忠勝のところへ、幸村とあたしはそのまま勝頼様の護衛を続けた。

「武田は、もう終わりかもしれない」
幸村は独り言を呟くように言った。
・・・・独り言は初老の始まりですよ、鬱村さん
でも、これは隣にいるあたしに言ってるんだよね。

「それでも、あなたは生きている。ううん、生きなきゃいけないんじゃないかな」
迫ってくる敵をあたしは、峰打ちではった押しながら答えた。
「なぜです、殿。なぜ私は生きなければ・・・」

「背負わなきゃいけないものと、あなたはもっと気づかなきゃいけないことがある、かな?」
「・・・いずれ気づけるでしょうか?」
「それは、あたしには分からない。でも、とにかく幸村さんはその為にも戦い抜いて、生きていかなきゃいけない。・・・・と思う」
「・・・・そうですか・・・」
あたし達はそのまま黙りこくってしまった。別に嫌な沈黙ではないんじゃない。
きっと、幸村は迷ってるんだと思う。
今まで武士として生きてきたすべて壊され奪われて。
そんな後で、自分のすべき事が見つからない暗闇で生きていくのが恐いんだ。きっと・・・。

「幸村さん・・・。あなたは大丈夫だよ」
突然、沈黙を破った声に幸村は驚いて顔を上げた。
「心の中の大切なものに気づけると、いいですね」
あたしが笑いかけると、幸村は静かに微笑んで「ありがとうございます」といった。
今日、初めて見た笑顔はとても切ない気がした。




あたしと幸村は無事、勝頼様を守りきった。
幸村は、慶次に諭され信長を倒しに。あたしは勝頼様と一緒に撤退した。多分あのままあそこにいても迷惑をかけると思ったからだ。

「伝令!真田幸村様が織田信長を討ち取ったとのこと!」
「おお、そうか!」
「・・・よかった」

あたしと勝頼様はほっと安堵の溜息をついた。負けるとは思わなかったがやっぱり心配は心配だ。

殿、ご苦労であった。そなたの主にも伝えておいてくれ」

「はい!分かりました。では、失礼致します」

白雲を走らせて慶次のいる敵本陣に向かったあたしは、その先で語り合う二人の姿が見えて速度を落した。話し声が聞こえる。

「生き残ってしまった。武士の時代は終わったのに・・・」
「らしくなくて見ていられないな」
「あんたの心の中にはちゃんと大事なものが生きているぜ」

「・・・慶次」
あたしは邪魔をしないようにそっと声をかけた。すると、慶次はこちらを見てから松風にまたがり、幸村に言った。
「また会おう」
松風がゆっくりと歩を進める。あたしは白雲に乗ったまま、ぴくりとも動かない幸村に声をかけた。

「生き残った事だけは、後悔しないで。・・・あたしは貴方に死んで欲しくない、生きていて欲しいよ。答えなんかまだでなくたっていいからさ」
「・・・・・殿」
幸村は顔を上げる。あたしみたいな小娘に諭されんのは嫌だろうけど、ここまで命を粗末にするような事を、死んでもいいって感じの事を言われたら説教の1つもしたくなるってもんだ。

「・・・またね」
「また、会えるでしょうか?」
「うん。また会おうよ」
あたしは笑った。幸村は瞳を閉じてうなずいた。

皆が、笑顔でいれる日がこればいい。
初めてこんな事思った。




(・・・・遅い)
は戦国無双2をやりながらそうおもった。
妹のをパシってから軽く5時間は経ったのにまだ帰ってこないのだ。もう夕飯も近い。
(友達と遊んでんのかなー)
考えてからそれはありえない事に気づく。
大好きな剣道の練習をさぼってまで帰って来るのだ。友達と遊んでいる可能性はかなり低い。
「よーし!!3人組攻略完了!!!」
真田幸村、石田三成、直江兼続をクリアさせると丁度、母の呼び声が聞こえた。
ー!!ご飯だよ!!」
「あーい!」
1階のリビングに下りて気づく。いつもは、用意されているはずのの食器、というか椅子さえ用意されていないのだ。
「あれ?お袋、のぶんは?」
その言葉を聞いた瞬間に、お袋は取り出した皿を落した。ガラスが粉々に割れた音が響く。
テレビを見ながらビールを飲んでいた親父の手も止まった。
、ゲームのやりすぎで頭が疲れてるんじゃない?」
「へ?べつにそんなにやってないと思うけど?」
「じゃあ、変な冗談はやめてちょうだい」
お袋が落した食器を拾いながら顔を青くしていった。
「てか、まだかえってこないの?」
、冗談はよせ。は・・・・・・・3日前に死んだだろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?」

そのあと、すぐに夕飯だったんだけど
誰も喋らず、本当に気まずい時間だった。こんなにまずい飯は食った事がない。

天国にいる(?)。お前はいつの間に死んだんだ???





言い訳
なんか猛スピードで進んでます。
次はそろそろ三成と兼続に出会えます。・・・・うん、予定は未定ですが。
そろそろ小田原城防衛戦の予定なんで。
あー、たのしみ。
ただ、三成はおそろーしく書きにくい・・・・・



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